ALMAZ 103 1978-1987
備忘録:
日本の中古カメラ屋で目にすることはほとんどないが(世界中でもないだろうが)アルマースは長い間気にしていたカメラだった。
とはいえ、まだロシアカメラにそれほど興味がないころだったし、第一、ソ連のカメラが簡単に手にはいるわけではなかったので、いわば空想上の動物を眺めるようなものであった。
どの雑誌記事かは忘れてしまったが、アルマースの写真を見て大変ショックを受けたのである。
国産機の、なかでもキャノンやニコンのようなメインストリームのフラグシップ以外は問題外と思っていたくらいで、ミノルタやペンタックスすらも眼中になかったわたしに気になる存在ににさせたのがアルマースのデザインだ。「日本の至宝、ニコンF2をコピーするとは!」
ケシカラン、とは思わなかったが、「ここまでやるの!?」というある種、ソ連のカメラ産業に畏敬の念さえ持ったものだった。
しかも、時代はとっくにF3だったのだが。
とにかくこのニコンF2に良く似たカメラは心にしっかり刻み込まれたのだった。ニコンのサブ機にアルマースをぶら下げて...、などと思い浮かべてうっとりとしたものである。もっとも、アルマースはKマウント、つまりペンタックスマウントなのだがこの当時はアルマースとキエフの一眼レフと混同していて外観からも当然アルマースはニコンFマウントになっているものと思いこんでいた。
それにしても、これだけ造り込んであるオリジナルカメラなのだから何もニコンF-2に似せなくても良かったのではないか?
もしくはいっそ、アクセサリーも完全にニコン互換にすれば良かったのでは?とも思うのだが。
アルマズか?アルマツか? ここでのアルマースという読み方について
*(ALMAZ)はアルマースとも表記されるようだ、アルファベットではALMASと表記する。
取り説(パスポート)には一ヶ所だけ、裏表紙にアルファベットが入っていた。
fig: 14日本語での表記の場合、宇宙関連をアルマースと表記して、カメラ、貴金属はアルマズという表記で分けられているのかも知れません。
「アルマースは宇宙ステーションの名前で、最初のアルマースは打ち上げられるとサリュート2号と称された。
しかし、アルマースという宇宙船の名前は余り聞き覚えがないのですが
「サリュート2号、3号、5号は実は国防を主目的とする軍事ステーション・アルマースであった..」という記事があるので訳あって名前を秘されていたものかも。
それはさておき、ここではカメラですがアルマースという表記の方を取ってみました。
いろいろ読み方はあると思いますが、「ギョヲテとは漏れのことかと、ゲーテ言い」というシャレ歌のように日本語=外来語の表記の難しさゆえと言えましょうか。**アルマズという読み方に関しては「Almazjuveliexport(通称「アルマズ」)は、ロシア連邦100%保有の公団で、PGM、ダイアモンド 及び宝飾品の輸出業務を行なう政府指定輸出代理店である」という記事もある。
このカメラはニコンF2にそっくりだが、実際手にするとニコンF2とは似てもにつかないユニークなカメラだった。
いわゆる日本製カメラとは風合いもまったく違うながら縦走りのコパルスクエア風シャッターでK-マウント、そしてニコンF2風ファインダーと、何とも言い難いカメラになっている。いままで紹介されることも少なく、詳しいことはさっぱり判らなかったカメラだが、おそらく最初に媒体上で記事になったのはクラシックカメラレビューのコーワとロシアカメラの号での島 和也氏の記事だと思う。
全体的に生産数も少なく、101、102,103,104とバリエーションがあるとされているが、101、104は試作程度、数台の製作数とされ、103以外はまず見ることはないとされる。
実際103以外の機種はオークション、カメラショップでも見かけない。
102はまず市場に出ないようだが103のTTLファインダー仕様であり、LEDのメーター、外観もニコンF2ASファインダー風。ハーフオートマチック・シャッターコントロールとしている文献もあった。
そしてここで話題とする103はフォトミックファインダー風だが露出計を持たないタイプでメカニカルシャッターと言う仕様だ。
有名な'McKeown's Price Guide では各タイプ、値段がついている。
Almaz-101,$1200-1800,Almaz-104,$1000-1500, Almaz-102,$300-450そしてAlmaz-103,$150-225、であった。
ロシア、ウクライナからのオークションの設定プライスはこのガイドに準じているのかも知れない。
出ることも少ないため、値段は売り手市場のようだ。
アルマース(アルマズ)は LOMO、唯一の一眼レフ |
fig-1:ディテール別頁参照。
よく見るアルマースはFP、X接点が並んでいるがこれはX接点のみ、こういうのもあるわけだ。深く気にしない。
プレビューはミノルタ式で使いやすく、ファンクションのレイアウトも無理が無く、なんだかとても使い良いカメラだ。
ソ連製の常で表面仕上げに荒さは見られるものの、純正なのかどうか判らないが....
アイレットの三角リングにはプラ製のクッション付きであるなど、ソ連製としては全体的にも丁寧な造りと思う。シンクロ接点のバリエーションもそうだが、このあたりはソ連製の常としてバリエーションをシリアルナンバーなどでおっていくのは無意味のような気がする。
プリンセルの黄表紙本が改定出版されれば書いてあるかもしれないし、そうでなくともバリエーションはこの先細かく分類される日が来るはずだ。
似て非なるもの アルマースとニコン、ミノルタ |
輸出はされていないらしいが、あまりにもニコンF2似なのが仇になって欧州、北米のバイヤーが恐れをなしたのだろうか?
もし輸出されていたなら、まずニコンF2にそっくりなデザインであることやソ連製カメラの常として輸出先での販売価格はおそらく非常に安価であったろうから、そこそこ人気が出たに違いないと思うがどうだろうか?。事実、ニコンコレクターにも好感(といっていいかどうか・・・)を与えるようだし、ソ連カメラに門外漢という人にもアルマースはかなりアピールするようで、クラカメ専科などに「珍しい」という紹介記事もあったせいか、見せびらかすと欲しがる人が多いのである。
上で「ニコンF2そっくり」と書いたが、実はニコンF2にはまったく互換がない上、見れば見るほど似ていない。
ボディーの握り具合、スイッチやボタンの位置など全体的にはむしろミノルタ似だが後述するが、アクセサリーはすべて、ファインダースクリーンも接眼レンズもまったく互換しないのである。
(接眼レンズはニコン互換でした。しかも!このページのアルマースに接眼レンズはついている!
ニコマートFTNから取って付けていたのを忘れていたのである。\_( ・_・)ところで、アルマースの時代で興味深いのは同時期、電子シャッター機ではあるがゼニットにも19、18というほぼ同スペックの一眼レフがあり、これらはいわゆる高級一眼レフになると思う。
ゼニット19は12万台以上造られたと言われるが、アルマースは何らかの理由で大量 生産されず、研究もまだまだ余地があるように思う。
それにしても、これらの高級機なスペックのカメラが次々とディスコンされていったのは当時のソ連国内の情勢と関わりがあるのだろうか?
カラーリングの妙 チョコレート色のカメラ |
おそらく普通は黒色仕上げのボルナ(MC VOLNA 50mm f1.8)だが、この個体はまず、レンズがブロンズ調なのが珍しい。レンズの上面 と下面では色味が異なるのだが、だいたいこのブロンズカラーが磨きすぎの手ズレのせいなのか色やけなのか、もともとこういう仕上げなのか判断が付きかねた。ま、こう言うのもあるわけだ。
ブロンズ色の仕上げで他に思い当たるものではコシナ、リコー(関係ないだろうがアルマースと同時期だったかも知れない)、古くはミランダのテッサータイプレンズにもブロンズフィニッシュが見られたが、あまり他のカメラには見ない仕様では?アルマースのボディーカラーは黒と茶、2色があるとされている。黒、茶どちらが珍しいと言うことはなさそうだが黒と茶がコンビになったタイプもある。
茶色は明るい日差しのもとでははっきり茶色に見えるのだが、室内などで見ると黒と見まがうような深い色で、 実際見ると、例えばこのアルマースは茶色のような緑のような、暗いオリーブのような、軍用色のようでもある。
この頁の撮影もなかなかうまくいかなかったが、 写真では難しい色だ。プラスチック部品は暗い赤茶(葡萄茶)であった。これも室内などで見ると黒と見まがうような深い色で日中の強い光の元では真っ赤にも見える。
計画途中で発売された見切り発車なのか?それとも当初の計画はとん挫したのか? |
モータードライブ(ワインダー?)のギアが底面に見られる。
日本のミランダにもこういう「ギアだけ」のモデルがあり、何となくシンパシーを感じるが、これは余談。
ロモLCAのモーターワインダーも幻といわれるひとつだが、ebayにも出ていたからロモLCAのモーターワインダーのほうは販売はされていたようだが、アルマースの方は資料すらまったくないから本当に幻。
海外のフォーラムに参加していないので最近の情報がないのだが、どうなのだろうか?
ファインダー周り |
ファインダーはあまりよろしくなく、眼鏡越しでもピントがまったく判らなくてものすごく見づらい。目が悪くなったのかと思ったほど視度が合わないのだが、近視ではない人だとなんとピントは普通 によく見えるそうだ。
室内などではスクリーンのフレネルが粗いのか光源が乱反射して見えた。個人的にはあまりにも見えが悪いので視度補正レンズは必須なのだが、といってもなかなか合うモノは見つからず、ちょっと乱暴ながらミノルタの視度補正レンズを取り出してファインダーに直接張り付けて解決してしまった。
ミノルタの小さい現行品の視度レンズは、プラ製の外枠の四隅を削って裏側を外にしてアイピースに直接はめ込んでやると簡単に取り外せる、これはVer.2。もっとも、ニコンのがあればそれでOKだ。
取り説を見ると購入時のセットにはラバーアイピースカップがセットになっている。fig-8
fig-8:ニコンのフォトミックファインダーとは互換性がないことは先にも書いてある通 り、しかし脱着のラッチもよく似ておりスクリーンのリリースボタンはそのままニコン風。
ファインダー脇のファインダースクリーン脱着ボタンはニコンとまったく同じ、アイピース上のレバーと脱着用
ここまでやったのだから互換性を持たせても良かったのに、これはある意味残念。fig-9:ファイダースクリーンも互換しない。
右はニコンのもので大きさからして違う。fig-9
fig-10:余談だが、何とも見えが悪く、変な感じだったのでスクリーンを外したところ
なんと! 磨りガラスのスクリーンが傾いて取り付けられていた。
これが後のメンテによるのか、ロモの出荷時のままなのかは不明だが、どっちにしろ見えにくい何とも切れの悪いファインダースクリーンでアルマースユーザーは新しいアルマースユーザーを見ると開口一番に
「見えにくいでしょう。」などと余計なお世話をしてしまうが、実は目のいい人は普通 に見えるらしく単にわたし(と知り合い)の目がひどく近視で悪かったらしい。fig-10
また、この個体はプリズムに泡があり、焦点板上に黒く見えてしまい結構気になる。
ファインダースクリーンは3種確認した。それぞれアルファベットでA、B、Cというタイプ銘がある。たまたま同梱されていたが、初めからカメラとセットかどうか不明。
A:
マット面/スプリットイメージ、マイクロプリズム複合最初からカメラにセットされている B:
マット面/マイクロプリズムC:
素通し/マイクロプリズム
縦走りメタルフォーカルプレーンシャッター
巻き上げは途中でかっくんと抜けてしまうけっこう安っぽい感触ながら巻き上げ角度は小さめ(110度ほど)。
小刻み巻き上げも可能で良いのだがシャッターフィーリングはどちらかというと大衆機のよう。
これはゼニット19、18も同じでシャッター音はコパルタイプにしては甲高い感じ。
fig-11
fig-11:シャッターはソ連製では珍しい縦走りの金属膜だと聞いていて、ようするにコパルスクエアそのものだと思っていたがよく見ると2枚羽根(後、先で計4枚)で、コパルの古いタイプか?というとそうでもなくてタスキの構造も異なるようで面 妖だ。
ゼニットとも違うタイプでソ連のコパル式?シャッターは奥が深いようだ。メカニカルシャッターでシンクロは1/60。
ミラーは後退上昇するタイプのようで、ミラー自体は十分に大きく立派。ファインダー脱着が出来るとむやみに嬉しいものだ。たとえ意味が無くとも。
ボディー裏蓋もニコン式に脱着する。
各種アクセサリーの情報は一切無いのだが、モーターワインダ(ドライブ)仕様でもあるし、250枚撮りマガジンなど計画があったのかも知れない。
マクロからミクロまで、というようなシステムカメラとして計画されていたのだろうか。
fig-12
fig-12:ケースは合皮、中にスエードが貼ってあるロシアカメラ伝統の造り。
fig-13:レンズのフィルター径は46mm。
計画倒れらしいモータードライブと言い、このフィルター径は46mmというあたりもミランダ者には他人と思えない。ミランダも大半のレンズが46mm径なのだ。K-マウントのレンズシリーズにはVOLNA、MIR、ZENITARなどがあるはず。
しかし、アルマースのためのマッチングレンズはまったく見ないのだが、一体普通 に売られたのだろうか?。そもそもアルマースはソ連製 K マウント機の魁とも言える。
当時、ソ連国内ではKマウントはマイナーだったかも知れないが今となっては数あるロシアカメラの中でも汎用性が高い1台だろう。MC Volna 50mm f1.8/ (1/15 f2.8)
MCボルナ 50mm f1.8被写体によっては2線ボケが激しい古い感じのレンズだが、立体感がなかなか素晴らしくトーンも細やかでポートレートなど質感も感じが良くて、とても好いたらしい描写 であった。
何しろマウントが人気の高い Kマウントなのでボルナを気にしている人も沢山居ると思う、ここでこうして見せびらかすことができてわたしも嬉しい。
実際使えばこの描写のファンになる人も多いとおもう。
フレアのせいかカリカリした感じがないのだろうか、人物など本当にいい感じで写 ってくれる。
わりと良いレンズかも知れない。
format 35-mm;Russian Reflex (Camera with system TTL-for 102)
lens : LOMO MC Volna (pentax-k).: f1.8/50mm: diaphragm scale from 1.8 to 22, focusing 0.45 m to infinite;
adjustable shutter speeds "B", 1, 1/2, 1/4, 1/8, 1/15, 1/30, 1/60(syncro), 1/125, 1/250, 1/500, 1/1000;
mechanical selftimer;filters mount - 46X0.75 :1020g(with lens)
( body #850xxxx lens#84xxxx)
- TOP -
02/10/21-12/31-03/04/11 up date 04/03/11