KIEV FIVE 5の倍数のキエフ
Kiev-10とKiev-15 automat このシャッターを見て愕かない人がいたら、こっちが驚く

KIEV-10のシャッターがちゃんと切れる。
それだけであなたは幸運だ!

 

*はじめに

このコンテンツの内容は、約3年前、ebayでオークションに出されていたキエフ-10での体験談です。 現在までの間、少しずつ加筆していますが、最近の事情とは異なるヶ所もあります。
とくに誇張した部分はないのですが、そこはそれ、筆が走りすぎたところもあるのは否めませんので、ソ連に深い愛情をお持ちの方が気を悪くするヶ所があったらごめんなさい。
と、最初に謝っておきます。
そして、重要なことですが、ここ1年くらいは、大して台数を見ていませんがちゃんと動くものが多くなっているような気がします。
さらに、売り手さんも対応が良い場合がほとんどで大きなトラブルはありませんでした。
いまのところ、キエフ-10シリーズは出品もコンスタントで比較的安価ですから、肝試しにはもってこいではないでしょうか。
03/09/04

 

KIEV-10シリーズは一言で言うと、とにかく「壊れてる」に尽きた。

壊れていた。現存するKIEV-10シリーズは全部壊れているんじゃないだろうか?と思えるほどだ。
しかし、2002年になってからは少し事情が変わってきた。現地でも修理されているのか?輸入されたKIEV-10,15に完動品も多く見られるようになってきており、KIEV-10購入はずいぶん気が楽になってきた。

とはいえ、そろそろ最初期型は払底してきておりオークションで現れるレンズも以前ほど潤沢ではないように感じる。そのわりには 値段は底値と言っていいようでここ一年ほどは低値安定と見える。

KIEV-10シリーズは国内の中古カメラ店に何度か出ていたという、それもビックリするような高価であったと言う。
実際「見た」とか、「買った」という人から話を聞くことはなかったが、少し前ならKIEV-10シリーズは世界的に幻のカメラであったし、動かないのを承知でコレクションする風流な人も居たのだろう。

風流とはほど遠いわたしだが、過去、それぞれ「完璧に動く」というのを数台買ったが全て壊れていた。
レンズの連動部であったり、フィルムのコマ送りであったりシャッター速度のばらつきであったり、シャッターが固着していたりと、どこかしらおかしいので写真が撮れないのである。
そのすべてはe-bayでありウクライナやロシアから直送されたのだった。
もしかすると輸送に耐えられないほど弱いのかも知れないが「次こそは、次こそは」と思って買い続けてしまったが、なんと!とうとう当たりはなかったのである。

最初の1台は輸送のせい(と先方が言うのだが...)でペンタカバーが歪んでおり、シャッターは全速超高速であった。もちろん実写にはいたらず、置き物になった。
おまけに当時、ロシアではPaypalもBidpayもつかえず、IPMOも送れなかったので(今はどうなのだろう?)赤い系列の銀行に手数料を払いドイツの銀行まで送金するという手間と費用もバカにならない方法でやっとの事で入手したのだ。

輸送のせいというのは、ロシアの小包の特殊性を説明せねばなるまい。

ロシアの小包は今でこそ、詰め物(緩衝材=スポンジ)がはいっているが、少し前までカメラは薄いよれよれの段ボール箱にそのまま転がっていることがほとんどだった。
むかし日本でも小包というと専用?の茶色い紙に包んで、ひもで縛って出したものだが、これがまたそういう懐かしいスタイルで届くのである。
ときには白い麻布にくるまれ、封蝋にエンボスの封印がしてある手間のかかった梱包で来るのである。

厳重な小荷物用パスポートの書類ときちんとした包装とスタンプに包まれているのに、中はカメラやレンズが新聞紙にすらくるまれずにむき出しで転がっているという、なんともアンバランスな小包であった。

ようするに

こういう扱いでは壊れていてもなにも不思議ではないのだった。
ロシア郵便局小包の仕組みに関しては未だによく判らないのだが、梱包は郵便局側で行い、自分では出来ないのかも知れない。

この後、売り手には注文を出して梱包に緩衝材が必ず入るようにしてもらうが、今ではなにも言わなくとも普通に入っているようだ。その緩衝材のスポンジがだいたい同じものなので、これらは郵便局で扱っているのではないだろうか?と思っている。
実際どうなんでしょう?

送料自体はヨーロッパと同じくらいの距離があるものの、さすがは隣国で、ウクライナにしても、もと隣国なだけにたいへん安価な送料で、小さいものは宅急便と変わらないくらいなのである、この点は大変ありがたいものだ。

話を戻すと、最初に縁のあったモスクワの売り手とは何度も何度もメイルをやりとりし、相手も辛抱強く対応してくれた。
拙い英語のために誤解も多かったが、銀行間送金でたいへんな思いをしたことなどで記憶に残る売り手さんで、一年ほどだったが絵はがきなどもらったりしたので、いろんな意味で想い出深い。
この売り手は今でもたまにe-bayに見かけるが、今思うとこの人の出品する品物はどれもちょっと高い金額設定みたいだ。

そして2台目に

そんなこんなで2台目はやはりロシアから。
何とかシャッターが動いたもののスローがかなり怪しく、また、肝心の絞りの連動が不安定で実際に撮影は出来そうもなかった。 連動する部分はアルミっぽい材質で、経年の使用によるものなのか、ナメてしまっていたのである。そこでやはり置き物に。
しかし、この頃ようやくロシアにBidpayが送れるようになり、使っても良いという売り手も多くなり送金はぐっと楽になった。
この辺りの事情はよく判らないがドルへの換金の代行業者が出来たりとか、人によっては米国に個人口座をもち始めたのかもしれない。

比較的簡単にロシア製カメラを手に入れられるようになると、戦前のフェドにキエフ、ゾルキ用のステレオ装置などなど見るものみんなめずらしく、しばらくはキエフ-10から気がそれていたのだが、やはりたまに出てくるキエフ-10の奇抜な面構えの魅力には抗えず、その後も何台か求めては見たが、大体似たり寄ったりでどれもこれも少しおかしい。
故障の理由もよくわからないのが悔しいところだった。

「とにかく一度は使ってみたい。」という気持ちはつのるのだった。

「どうしても使えるKIEV-10が欲しい」ということで、特に信用がおけると感じたコレクターのセラーから買ってみたのだがやはりダメだった。
普通、3度目は正直なのだが、3度どころではなかった、ここまでひどいとは...。

キエフ-10と15はわたしの中では「打ち切り」になった。
なったはずなのだがこの時点で交換レンズはいっぱい買っちゃってるわ、ボディーは10、15まとめて5台もあるわ、というひくに引けない状態ではあったのだ。

だいたい「壊れてるから次のを買っちゃおう。」というのは、このカメラが比較的安価に手に入るからできることだが、安いと言っても邦貨にして平均¥15,000からするのである。

これは何かの呪をかけられているのだ。
ふつう壊れてたら懲りて、もう二度と買わないのではないか。

まずはこの故障カメラの売り手にクレームの連絡を入れた。

そして、「他にも壊れたKIEV-15があるのだが、そちらで直していただけるだろうか?」

と打診してみたところ、わりと快くOKという返事が出てしまった。
「こちらで送ったKIEVの修理代は頂かないが、他のKIEVの修理代は1台$25いただきます」という。

安い。¥3,000ほどではないか、どう思いますか?この修理代。
物価が違うだけではすまされない、なんかこう異質な感じというか、外国なんだなあと改めて感じたのであった。

キエフ-15を2台と返品のキエフ-10を1台をプラハに発送した。
実は送る前のメイルのやり取りでは、この売り手さんは自分が送ったキエフ-10に自信があったようで
「普通のカメラと操作や動作が違うので、故障は君の思い込みではないか?」
「Kiev-15の修理はOKだ。わたしのKiev-10が気に入らないなら返送してくれ」

という、ちょっと険悪な雰囲気であった。
まあ、見なければ判らんのかも知れないし修理ができるのなら「また日本に送り返してほしい。」ということをお願いして返送した

中央ヨーロッパでは輸入品に高額の関税がかかるようで 、先方から税関に関する注意書きがびっしり書いたメイルをもらっていた。
それを一部書くと、こんな感じだ。

返品のKiev-10以外に送る2台の15について」
●「故障していることを証明する」という事を必ず一筆入れておくこと。
●そこにレンズ、ボディーの全てのシリアルナンバーを明示すること。等々
ほかにもいくつか免税にするために必要な指示が細かくあった。
どうも税関は(どこもそうだが)難しいところらしい。
ちょっと不安になってしまったが何事もやってみないことには可も不可もないのだ。

プラハには2週間ほどで届いたらしいが 、不安だった税関ではやはり止められてしまった。
何でも、こちらの書類が不備だったらしいのだが 、けしてそんなことはなく全て揃えてあったはず。
しかし書類が一切はいっていないというのだ。

「このままでは税関から引き取ることは出来ないだろう」

などと 先方は怒るし、こちらの不安もつのる。
結局、先方とのメイルのやりとりで時間はいたずらに過ぎてゆき、書類の不備は原因不明であり必要書類は再送することになったのでさらに時間を要することになってしまった。

すでに発送後2ヶ月経っていた。
あんまり時間がかかっちゃうと、わたしなどあきらめ半分でどうでもよくなってきてしまうが、ebayのカメラは性善説で成り立っており、大抵時間はかかるが必ず品物は届きトラブルは理解し合えるのだ

それに、このくらいの事は何となく想定していたから正直言うとそんなに驚きませんでした。
などと書くと、さも「個人輸入」に手慣れたように見せているみたいだが 、個人貿易は根性付くからねえ。

さて、書類を再送付しても税関から出すのに長い時間がかかるようで
「時間がかかるが必ず税関から戻るので安心しろ」
というメイルを最後に連絡が一時途絶え、待つしかなくなるのだった。

それからさらに3ヶ月近くたったころ(わたしも半分忘れていたのだが)はたと思い出して催促のメイルをするとなんと、 とっくに税関から戻っており、修理も終わっているという。
すぐに返送の手配をしてくれた。


どうやら、向こうも本当に連絡を忘れていたのである。

こちらから送ってから6ヶ月近くかかって修理を終わったカメラが届いた。

シャッターは今のところ作動する。
1台はまたすぐ壊れたが、これはもう寿命なのであろう。

そして、 返品扱いとなったキエフ-10は故障を認められ、晴れて無償修理、その分の送料は他の修理代、送料から差額返金となった。
「部品を探すのは非常に困難だった」
とのことで、なんらかの部品交換があったのだろう。
後学のためにその後何度か修理の詳細を訪ねたが、先方は本当に面倒臭くなっていたのだろう。
この件についてはとうとう返事がなかった。

2003(2013)

 

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