-4- キエフ-5はどのような位置にあったのだろう2

時代に見合ったリニューアルをするということはコスト・ダウンも大命題なのだろうか?キエフ4aの上級機種と思わせる記述も多かったし、そのままのブロー・アップ・バージョンと思っていたのだが、コストダウンを強く感じるところもある。

報道用のプロユースカメラだと言う記述もあって、その真偽は定かではないけれど、いままで手に入ったものはファインダーまわりやシャッター周りなどはとくに精度の高い部品は使われているとは見えない。でも、そういうバージョンがあるならシャッター精度、耐久性などは民生用とは違ったのかも知れない。。

露出計も装備されて、キエフの上級機種にあたるのは間違いないが、単にグレードアップと言うよりキエフ4a (コンタックス2)の無駄な部分を取り去ってみたタイプ。という見方もどうだろうか?

キエフ4aの
「これは、無くても困らないのでは?」
という部分がキエフ-5では省かれていると言う見方をしてみよう。

1 : 89.5mm(100mmの記述も)という長大な基線長はいらない
2 : フォーカシング・ダイアルはいらない
3 : マウントにある標準レンズ用のヘリコイドもいらない
(マウントにある標準レンズ用のヘリコイドが省かれたため往年の名レンズが使えなくなる大弊害がある)
4 : 1/1250シャッターもいらない
5 : 無限遠ストッパーもいらぬ(これはバリエーションになった)

*バラバラにするほど内部検証はしていないので、内部にも他にも省略されたり、変更された部分が有るかも。
ファインダーの構造は上述の通りまったく別のものなっている。

キエフが捨てたもの、拾ったもの
こうして変更点を上げていくと、デザイン上からもキエフのキエフたる所以、戦前コンタックスそのままの優雅な部分を省いてしまったように見え、まるでキエフ4a(コンタックスII)を否定しているようだが、キエフ-5はばっさりやってしまった。

もちろんこれら変更点を見ると新設計の部分も多く単純にコストだけを云々するのはナンセンスだろうが、このリニューアルはキエフにとって正解だったのだろうか?

外観ひとつ見ても高級機と言うにはあまりにも粗い仕上げなど、設計と技術者、実際に造る工場労働者達といった人たちのモチベーションに相容れない溝があるのでは?とか、キエフ5を見ていると制作側のアンバランスがぼんやり浮き出てくるようだ。

いずれにせよキエフ-10、キエフ-15は約10年間、そしてキエフ-5は8、6年間、それぞれ継続して造られたので、ソ連のカメラ産業のなかでは確立したポジションがあったに違いない。
そのわりに 跡形もなくディスコンティニューされてしまったわけだが、故障は付いて回ったようだし、こういった精密なメカニズムがソ連の生産形態には合わなかったのかも知れない。

ネット検索していて、いいお言葉を見つけた

「...DNAは二本鎖がらせん状に結合しているが
うち一本は突然変異率が低く、もう一本は高い。

つまり、片方で現状を維持しておき、もう一本て試行錯誤を行うのである。

試行錯誤(突然変異)のほとんどは、結果を出せない。
ごくたまに、突然変異の結果が現状より良くなることがある。

そうしたら、今度はそちらを中心にすればいい。

二本鎖になることで、失敗をおそれず
心おきなく試行錯誤できる構造を確保したのである。」

キエフの場合二本鎖とは、一眼レフではキエフ10シリーズと17のシリーズの2本の鎖。
レンジ・ファインダー機ではキエフ4のシリーズとこのキエフ5、となるだろう。

突然変異のキエフ10とキエフ5は消えた事をふまえると、最後に残ったキエフ4AM、キエフ-19は存在理由がよく見えてくる気がする。
突然変異のキエフ10とキエフ5は結果は出せたのか?出せなかったのか?

この判断はいつの日かアーセナルから公式にコメントされることもあるかも知れない。

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