Zenit-19 and Zenit-18 1979-1987

 

ゼニット19も18もオーソドックスな縦走りメタルフォーカルプレーン、電子シャッター機で、電池がないとシャッターは正常に作動しないみたいだ。1/60、1/125でメカニカルシャッターになるかと思ったら、どうもメカニカルシャッターはないらしい。

ゼニットのサイトhttp://www.zenit.istra.ru/archive/から
ゼニット-18の取り説がアップされており(2003年現在、19やプロトタイプなどもあり ( 内容はどんどん増えている)
日本のサイトにもリンクを貼っているところがあったけれど、当然ロシア語で翻訳が必要になります。
http://www.worldlingo.com/など日本語と外国語を繋ぐ翻訳サイトなど利用してみましょう。

 

ファインダー、メーター・・・

ゼニット19は絞り込み測光のTTLでゼニット18は絞り優先AE、開放測光TTL。
中央重点測光で、マイクロプリズムの周りに沿って測光しているようで、露出計の出た目は満足いく値だ。
素子はcdsらしい、昼間はいいのだがちょっと暗いところだとかなり反応は鈍い。

ゼニット19

適正露出を示す位置は[ + 0 - ]で表示されるが、真ん中の適正に合わせるにはちょっとコツがいる。
光に反応するのが遅く、一旦、明るい面に向けて勢いをつけてやると少しは楽。
しかしニードルの振幅が大きく半絞り変えただけでばーんと跳ね上がるのはどうも・・・
国産のちょっと昔のCdsメーター機も鈍かった記憶があるが、ここまでおっとりしていなかったと思う。しかしまあ、Cdsはこんなものでしょう。

青っぽいほうがゼニット19。この青はゼニット15、16譲り。

 

ゼニット18

準備中

http://www.zenit.istra.ru/archive/によると”ソ連最初のコンピューター制御の一眼レフ”となっており、このアーカイブはちょっと見ないうちに充実著しく、プロタイプのエレクトロ、ゼニット21なども見られる。いや、ほんといい時代になってきた。

*ゼニット21は1981年からのようで
variant of zenith - 18 とかモダナイズド...くらいしか説明がないが、外観はほぼ同じ。

19の開放測光タイプで上位機種らしい18などぜひ使ってみたいものだったが、肝心のメーターは壊れていた。
これは仕方ないかも・・・同じようなスペックの ペンタックスES-IIも、まともに動くものが少ないし。

ファインダースクリーンはマイクロプリズム付きで、18にはスプリットイメージ式のレンジファインダーも付く。
LOMO製一眼レフ、アルマースよりはピントが見えるが、見えるとはいってもファインダースクリーンはダメダメ、かなり見にくい。たぶん、よほどのソ連カメラマニアやゲテモノ好き以外はこれで使う気をそがれる人が多いと思う。
視度がどこに合わされているのか不明だが、なにしろ目が悪くなったような錯覚がするほど見づらいうえ19は青い着色で暗い。
しかし、若干ハイアイポイントであり、眼鏡を掛けていても見やすいということも書き記しておく。

見えにくい場合、ペンタックスの視度補正レンズをちょっと削ってやれば取り付け可能なので
-1ないし-2を付けてやるといいだろう。

*青いファインダーというと、古いカメラ雑誌で読んだのだが
「ライカ(SL)の一眼レフは青く暗い感じなのだが、ライツの技術者には暗いという感覚が判らない、日本人には暗いファインダーだが視覚が欧米人と身体的に差があるのではないか?」
という記事があったが、その後この疑問はどうなったのだろうか?

外装・・・

ボディーの大きさ、とくに縦長なところがまた良いバランスなのである。
コレは見た目を大きく裏切る。

筐体はダイカストだが上下外装はプラスチックでゼニット19と18は基本筐体は同じだろう。ファンクションのレイアウトもほぼ同じで兄弟機のようだ。…どちらが兄者かというと、オバQやアトムでは弟者のほうが出来がいいので19が兄者と言うことになろう。
一眼レフの基本的なレイアウトはゼニットだろうがニコンだろうが、どのカメラもだいたい同じだが、このゼニットは日本のものともヨーロッパのものとも違う独特なセンスのトータルなデザインと思う。
一見不細工なのだが操作性はとても良く右手に全てのファンクションがあり巻き上げ角はおよそ90度(遊び角も90度くらい)、左手でボディー保持しつつ、親指をかけておいて、ちゃっちゃと巻き上げながら指のかかるところに大きな絞り込みボタンがあり、右で全ての操作が出来るためとても使いいい。

なかなかデザインがしっかりしていると思っていたら、ゼニットのアーカイブによるとデザインは意匠登録(コピーライト)が3つ、何だか金メダルだの銅メダルだの銀メッキになんかだのを取ったようなので、どうやら鳴り物入りのデザインであったようだ。
ボディーのほうにはキリル文字表示しかなく、英語はまったく見られないので門外不出で輸出は考えられていなかったのだろうか?アイデアスケッチ(?)ではグリップがあり、より1980年代らしいデザインも案にあったみたいだ。

ソ連内ではハイクラスの高級機になるようだが
シャッターフィーリングも全体の造りもブルジョア的ではない日本製大衆機程度。

"18"はアイピースシャッター付き。ファインダーの窓左に開閉のレバーがある。
また マウント部分の電気接点に注目。"

バックの早見表にはASA1000まで表示されているが、19のセレクターにはASA500までしかなく不満。

プラスチック外装なうえ、例によって細部仕上げやパーツは荒っぽいので損をしているし日本的感覚では計れないのだが、ダイカストの部分は表面が荒れていて仕上げは非常にチープでがっかりする。
高級機にしてこの仕上げ?という疑問というか違和感、KIEV-10,15,5にも増してもくもくと涌いてくる。
カメラのような実用品と芸術的な工芸品は違うと言えばそれまでなのだが、ロシアのいわゆる高級品や美術工芸のグレードの高さを思うとちょっと不思議だ。実用品と割り切っているのか?実用品を美しく仕上げることがブルジョア的とされるのか?
ともあれ、こういうところもソ連製カメラを受け付けない人たち、厳しい検査規格を通ってきた日本製カメラを基本とする人達には「許せない」一因なのかも。

それがソ連スタイルなのであろうが、ここを除けば(あと、作動の保証とか精度もあれば、それからファインダーがちゃんと見えれば、それからそれから…)機能など、この時代の多くの西側にあった大衆機カメラと較べて遜色はない。
いや、 遜色はないと言ってもこのころの西側最新機種からは10年以上のタイムラグがあるようで、とても1980年代のカメラには見えないのだが。

ところで、このカメラはソ連ではどのような扱いだったのか?ちょっと興味深い。
これはebayで 、カメラ屋ではなくてたぶんアルバイト程度に売っている人ロシアの人から手に入れた。
ちょっと入手経路など聞いてみたのだがそれは企業秘密だそうで教えてくれなかった、そりゃあそうかも知れない。

そこで、使用されていた状況など興味があったので問い合わせたら、面倒くさかったのかも知れないが、「どういうところで使われていたのか知らないが、大衆機とはグレードが違うカメラで現物はこれが初めて見たものだ。」とのことだった。

19の系列のバリエーションに、МТ 、 Surprise МТ-1の医療用とか潜水艦の潜望鏡用とか言われたハーフ判カメラがあり、汎用性の高いボディーだったことが伺える。しかしゼニットのアーカイブには潜水艦の潜望鏡用というくだりはないので潜水艦というのは誤った解釈をした人がいたらしい。
Surprise МТ-1はebayで木製のトランクに入ったセットなどが結構高価にオークションされていたが最近では流石に見かけなくなった。

電池室が二つ、左右に分かれて配置される”18”、ゴスト=ASA/DINセレクターがある”19”
電池はボタン電池。MR-9の大きさの電池を使う。

*おそらく、ここにせざるをえなかったのだろうが三脚穴の位置は設計ミスでは?と思われるほど使いづらい。
レンズが雲台にかぶってしまうのである。

fig-2

19も18も基本的なレイアウトは同じでシャッターボタン後ろの青いボタンはフィルムの巻き戻し、リワインドクランクの傍の赤いボタンはバッテリーチェック。 背中のLEDが赤く光ればOK。

fig-3

電池を初めて入れてバッテリーチェックで導通を確認できたときは本当に「ほっ」とした

fig-3: 裏蓋は脱着可能、長尺マガジンなど用意されていたのだろうか?
全体のがっしり感に較べてヒンジははらはらするほど貧弱だが、こういうアンバランスな部分はソ連スタイルなのであろう。
ゼニット19では脱着しないタイプがあり、開閉の仕方も異なる。
脱着しないタイプはシリアルナンバーが若いので便宜上「前期型」としてみたい。

 

シャッター・・・

このシリーズはTTLになっており、Zenit-19はボディー右下側の大きなボタンでの絞り込み測光で、ボタンのプレッシャーは「がっちん」という固いスイッチのようなフィーリング。
ストロークが重く、余りよい印象を持たなかったのだが、これは馴れたら案外軽快で最初の「チープ」な印象は変わっていった。

Bから1/1000のシャッターだが、シンクロスピードの違いに注目。18は「A」モードがある。


18”のシャッターダイアルは・・・なんとう!上に引っ張ってセットするタイプである。

fig-2 :シャッターボタンには大きなシャッターロックノブがありバルブ固定もできる。
軍艦部に巻き戻し解除ボタン(ブルーのボタン)があるところはまるでバルナックタイプのようで古(いにしえ)感ありだ。

限りなく何処かで見たようで、まったく違うというこれぞソ連スタイル。(ゼニット19)
なんとバリエーションも!便宜上、前期型(未撮影)、後期型(上図)とする。
同時期のアルマースの縦走りメタルフォーカルプレーンシャッターともまったく違う。* 参考 ALMAZ-103

明らかにコパルスクエアではない、が、参考にされたのには違いない(右:巻き上げ時)スタイル。コパルスクエアも沢山バリエーションがあって縦走りメタルフォーカルプレーンシャッターと一口にいっても非常に深い世界だ。
ここで思い出されるのは、ゼニットに突然変異的に現れて消えたゼニット-16の縦走りシャッターだ。ペンタコンスーパーにも布幕の縦走りシャッターが搭載されていたし、なかなか奥深い。
縦走りフォーカルプレーンシャッターも多様で調べていくと面白そうだが、ゼニットは一時、布幕の化石のようなシャッターに逆戻りしてしまったし、旧東側での新しいシャッターの開発はソ連崩壊以降ぱったりと停止してしまったかのようだ。

*この手の電気式シャッターは長期間電池が入っていない場合など、シャッターが全速で高速シャッター状態のようになる場合があるが、電池を入れて数時間エージングしてやればいいとおもう。それでダメならあきらめる。

 

Zenitar M , Zenitar MC ME-1

絞りは何だかコンパクトカメラのようだが、抜群にシャープでヌケがよいという
・・・ものすごくアンバランスなレンズだこと。

ゼニット18では、電気接点付き専用レンズ(MC ゼニター ME1 50mmf1.7のみのようだが)により開放測光する(とおもう)。MC эенитар-МE 1 50mm f1.7は"18"専用、電気接点があるタイプで四角い絞り形状、なんと2枚羽根なのである。
電気接点は細いピン、ストッパーで定位置に留まる。

電気接点付き専用レンズには他にズーム(MCバリオゼニターME) MC Вариоэенитар-МE 40-80mmf2.8のズームがあるも未見。
存在は未だ確認していないが、常として「幻」のソ連製はひょっこり出てくるので今後に期待であろう。(以前、e-bayで出たとも聞く)

ゼニット19ではレンズはHerios-44M 58mm f2のほか、Zenitar Mの50mm f1.7。
それぞれマウント付近にマニュアル/オートの切り替えボタンがある仕様 。
絞り連動ピンのある普通のM42のレンズ。

 

 

ゼニットの進化のゆくえ...

現行(?)の121、212など3桁ものゼニットは、プラスチックの外装でデザインは今風なのだが、中身は初代ゼニットそのままの布幕フォーカルプレーンのシャッターユニットに現代の目からは異様に小さいミラーボックス、1/500までのシャッターはスロー無しというほとんど化石のようなスペックで初めて見る人に衝撃を与える。
でも、これらの三桁ゼニットは日本人に馴染みのあるゼニットEやコミナーのレンズが付いていたダイエーのカメラ、メプロゼニットとほぼ同じフィーリングで、ある意味ゼニットらしいゼニットであった。

しかしここ数年、日本では驚くほどソ連カメラの間口が広がり、今まで知らなかったモデルがどんどん出てくるに至ってゼニットのパブリックイメージのようなものが大きく変わった。
とくに、16以降の2桁シリーズはソ連カメラの「コピー」と言うイメージの払拭に役立ったのではないだろうか。

このシリーズはシャッターやファンクションの系統がまったく異なり、縦走りフォーカルプレーン、プラスチックの外装で絞りがセミオートマチック、またはオートマチックで、19のシリーズからは1秒から1/1000までのコパル風のメタル縦走りフォーカルプレーンでミラーも大きく現代のカメラそのものなのだが、何故かこちらがディスコンになってしまった。

ゼニット19は当初「T1」という呼ばれ方で、1976-1978年に開発され1979年から1987年まで造られた。
ゼニット18は19のすぐ後、1978年から1980年に開発、1980年から1987年までほぼ同時期に造られていた。
1977年にはミッシングリンクとして19から18へのプロトタイプ、エレクトロと言うモデルがあったようだ。(これは先日ebayに怪しい感じで出ていたが・・・)
さらに15、16のバリエーションの19があり、内容的に生産型の19とのミッシングリンクのさらにミッシングリンクのようである。

このほぼ同時期、19シリーズを追いかけるようにゼニットはAシリーズという一連のKマウントのシリーズがあって、ソ連最初のデジタル制御のフォーカルプレーン一眼レフ、DXコード対応というまさに新しい機種が誕生していた。このシリーズは1/2000のコパルEM-СMS-578MMシャッター搭載のAPシリーズに進化して21世紀に羽ばたきそうになったもののソ連の経済の状況が悪化、製造は不可能になってしまったが最近KMとなって復活した。

ゼニット19と同時期のロモのアルマースもソ連製の造りの良いカメラなのに同じころディスコンになっているのだが、やはり国内事情が関係しているのだろうか?
ブレジネフ体制の絶頂期から一気に下降するソ連を見てきたゼニット19は、電子化されていく日本製カメラを横目で睨みつつ、育ち損ねたシリーズのようだが、内容的にはベッサフレックスと同じようなものだ。まだまだ市場に余地はあると思うがどんなもんだろうか。

ソ連製35mmカメラの歴史は古く、35mmカメラも1930年代に始まるオリジナリティーのかたまりのようなスポルトに、ライカコピーのフェド以来、第二次世界大戦をはさんで多種多様なカメラが開発されており、ロングセラーとなった機種もあれば、一機種で途絶えたシリーズもあった。
そんな中で特筆される機種が揃って出された年度があり、戦後では1958年から1964年にかけてレニングラード、キエフ-10などが発表された戦後の第一のピークとすると、それからわずか10年後だがゼニット16以降、キエフ-17,アルマース、ゼニット19(18)の発表された辺りは、戦後の第二のピークになるのではないだろうか。

レザーのケース。ケース内はあでやかなブルーのスエード、ケースは相変わらず良い造りだがストラップなど金具がはらはらするほど貧弱。だが、ここもソ連スタイルなのであろう。

format 35-mm;Russian Reflex Camerawith system TTL (M42).
lens - Helios 44M-4 : f2/58mm;Zenitar M 50mm f1.7; MC Zenitar ME 50mm f1.7(only Zenit 18): (diaphragm scale from 2 to 16, focusing 0.45 m to infinite)
adjustable electoronic shutter speeds "B", 1, 1/2, 1/4, 1/8, 1/15, 1/30, 1/60(syncro), 1/125(syncro : Zenit 18), 1/250, 1/500, 1/1000;
TTL light Meter (with needle in view finder);mechanical selftimer;filters mount - 49X0.75 : 935g(with lens)
(Zenit-19 body #8301xxxx lens#80xxxx) ( body #81029xxx lens#8197xx)
Dimensions: 138x96x103mm
Weight: 0,95kg (ゼニットのサイトによる)
(Zenit-18 body #8601xxx lens#86xxxx)
Dimensions: 138x96x103mm
Weight: 0,9kg (ゼニットのサイトによる)

 

バリエーション

below: body #81029xxx
上図:ゼニット-19 よりわずかに若い番号帯だが裏蓋の開閉方法が異なり意匠も異なっている。
シャッターボタンのスイッチも異なる。
余りにも観た個体数が少ないからなんとも言えないが、初期型としていいのだろうか?
  04/05/20

 

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ARTICLES初出02/12/21- 03/04/07 ,03/04/10 ,03/10/20 ,04/05/20