zk LENS For Kiev(contax mount)
3group 6elements / 40.5x0.5 / 50mm f2
ジュピター・シリーズはZEISSのビオゴン、ゾナーの発展型としてソ連で大変長い間造っていたレンズで、様々なバリエーションがある。
キエフマウント(つまりコンタックスマウント)が本来のものだと思うが、フェドやゾルキーのためのライカマウントの方が一般的に有名かもしれない。Zkというのはzonnar-krasnogorsk、ソ連のクラスノゴルスクのゾナーということらしい。
ゾルキー・クラスノゴルスクというのもどうだろうか。
それはともかくZK50mmf2は 後にジュピター8と名付けられるのだが、ジュピターという名称になる前、ほんの少しの間はこう呼ばれていたのだ。
もう一つのジュピター、35mmf2.8のジュピター12はBk、Biogon-krasnogorskである。そもそもジュピター8はゾナーコピーで...と語られることが多いけれど、ジュピターの出自がゾナーそのものとするなら、コピーというよりノックダウンではないだろうか。
第二次世界大戦でのドイツ敗戦後、ソ連占領区にあったzeissの工場、光学関連の一部が接収され(と言ってもごく一部分という。zeissは巨大企業でしたから。*-1)。
zeissは戦時賠償用のコンタックスの生産という事もしていたのだが最終的に工作機器、科学者、技術者、職工もふくめて持っていかれてしまった。それを元に造られ続けてきたとされるのがKIEVとJUPITERシリーズという。
ジュピターシリーズのおもしろいところはこれからだ。
ジュピターにはzeissと同時期の製品もあるが、Zeissでの戦前型のゾナーの生産終了後も連綿と作り続けられており、オリジナルと違う進化をしていったと言うところが大変興味深い。
それに、戦後のソ連のレンズはツァイスイエナと完全に連動していたのでは?と考えると、ジュピターのような戦前レンズに戦後のツァイスイエナの新技術も投入されていたであろう、というところがソ連製レンズの一番おもしろい部分と思う。
ツァイスイエナの新技術がソ連に伝わる手段については、イエナの光学研究室にソ連の何者かが現れ
「では、頂いていく」
といってイエナの最新光学研究リポートを持っていく・・・。というのも目に浮かぶが、ペンタコン公社と企業間の正常なやりとりで研究のやりとりがおこなわれていたのだろうと思いたい。
だが、もしかするとソ連の「ZEISS接収」は戦後もずっと続いていたのかも...。このzkについてだが、黄変が少なく好ましいコンディションだった。
古いものなのであまり気にしすぎるのもどうかと思うが、レンズの着色は感じのいいモノではないからこれは嬉しかった。
zkなどゾルキーネームの初期型のキエフレンズは大抵、ボディーとセットで売られており、レンズ単体で出るのは珍しかったのが、たまたま単体で手に入った。
これのマッチングのボディーはどうなっちゃったのだろうか?出来ればマッチングボディーとレンズで置いておいてやりたいのが人情(と言うかコレクター魂)だが。ところで、このzkはゾルキーネームなのだが、1947、1948あたりのもっと古いものはzkと年号とKMZマークのみ刻印されている。
そもそもzk1947、1948は沈銅のみが知られていた。
リジットタイプもあるらしいといわれているものの現物の写真も無く、幻であったが先日東京のカメラ屋にあっさり現れている。そのリジットの真贋は不明だが、ソ連製といえどもレアなアイテムは下手なゾナーよりは、よっぽど高価で取り引きされることも多いだろうし、この手のレンズが最近になってよく出てくる辺り贋作の可能性もあるのではないだろうか。
zkは1947、1948、1949そして1950年の一部まで、zkのzorkiネームは1950年までとされ、 KMZのマークが入っているモノ、入らないモノ、マークの意匠が違うもの、ジュピターだけどZK、などなどバリエーションはいくつかあるので、研究も進めば何れまとまった記事も出るだろう。
とくに、ジュピター・シリーズが完全にソ連で国産化された時期など今後の研究を待ちたい。
「ミミ」付きの絞りリングはZeissゾナーそのまま。
キエフに付けるなら漢らしくリジットタイプ。でも沈銅を持っていたら沈銅。*-1
ソ連が接収したのは一説には273人の工員、技術者、科学者と、米軍が先に持っていこうとして置きっぱなしにした貨車に積んだ工作機械類、この時強制連行された人たちは数年後にかなりの数が西ドイツなどに亡命したと言われている。戦勝国の引き抜きでかなりの数の科学者、技術者がZEISSから去ってしまったが、東ドイツ領となったイエナ本社に残った人たちも多かった。
話はそれるけど西ドイツは戦時賠償支払額は旧枢軸国随一。第一次大戦の敗戦以来ドイツは払いっぱなし、取られっぱなしなのである。誤解を覚悟で言うが戦争は勝たないとさんざんだ。
えらい値段だった。と言ってもおんぼろゾナー程度だが。
開放、無限遠で試写。
以外!歪曲ありみたいだ。絞り段階露出で数葉撮ったものだが2〜3段絞ると中央付近のビル窓の反射がさらにくっきり、サッシの枠まで見えそうな勢いだ。
思ったより線の細い描写をする。と言ってもサービス判を見ながら感想だが・・・。
いずれにしてもレンズはメンテが行き届いているようで、当たりはずれがよく言われるソ連製だが、コンディションがよいと本当に立派な写りをするものだ。
最近、日本の気候が変わりつつあるように感じるが、しかし、日本の空ってこんなに青かったろうか?もしかすると、フロンティアなどのデジタルプリントのせいかもしれないが。プリントを見てびっくりしてしまった。確かに青い空だ、と思って撮影したのだが・・・
この撮影の時は特に乾燥しており空気もことさら澄んでいた、一種の異常気象下であることも関係していると思う。
撮影のカメラは最近よく出回っている後塗りキエフだが、ちっ。圧板がネガにキズを造るようだ...。
02/04/09
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